今回は、女性プロアスリートとして、長年一線で活躍されてきた元なでしこJAPANの久保(旧姓:須藤)安紀子選手に女性アスリートならではの、月経時のリアルなお話をお聞きしました。
久保選手:『22年間、サッカー選手として活動してきた中で、どのように生理と向き合ってきたのか・・・自身の経験をお伝えすることで、女性のスポーツ選手だけでなく、全ての女性、またはそれを取り巻く環境がもっと改善されたらいいなと思います。』
小学生の時に始まった生理
6年生で始まった生理
私の生理が始まったのは小学校6年生の時。この頃にはもうサッカーを始めていました。生理については、学校では学んでいたものの、実際に使用するナプキン等の情報は親にしか聞けませんでした。だから生理中や生理前後の身体の変化や、様々な困難とは、幼いながら試行錯誤しながら付き合っていました。
ナプキンがずれて血が漏れる
中学生になると心身共に成長も急激で、いろんなバランスが崩れたのか、生理が3ヶ月遅れたり、ひどい時は半年もこなかった時もありました。この時の最大の悩みは、激しく動くとナプキンがズレてしまったり、漏れて短パンに血がついてしまうので、練習や試合に集中できなかったこと。そしてこの頃から毎回と言っていいほど生理痛があり、辛い時は痛み止めを服用しながら頑張っていました。タンポンの存在を知ったのは高校生の時。それまで悩んでいたナプキンのズレなどは無くなりましたが、タンポンのサイズのチョイスを考えるように・・・。この頃は素材選びなどの知識もなかったので、便利なものとして使用していました。
生理痛でパフォーマンスは落ちるのか
PMSにフォーカスしていなかった
私だけではなく、腹痛・身体が重い・だるい・浮腫むなど、他にもPMSで悩んでおられる選手は結構たくさんいました。しかし、特にそれについて話し合ったり、相談したりという流れにはなりませんでした。プロサッカー選手として試合に勝つために、日々練習に励んでいたので、みんな生理中の不調にフォーカスしていなかったのです。仕方ないことというか、当たり前のこととして捉えていたのです。
PMSの対処
女性なら生理痛があるのは当たり前だと思っていたので、痛み止めのお薬を服用するしか、対処法は考えていなかったです。血の量が多い時などは、血の漏れ防止するためにスパッツを履いたりタンポンを使ったりして、練習や試合には、いつも通り参加していました。
生理痛は当たり前の事と思っていた
先にも言いましたが、生理痛は毎回のことだったので、実際にパフォーマンスが落ちていたのかどうかは、現役時代は正直あまり意識していなかったです。その時その時、全力投球していたので気づいていなかっただけかもしれません。今思えば、生理痛があるということは、パフォーマンスにも少なからず影響はあったかと思います。
周りの男性は理解があった?
男性の監督・コーチ・トレーナーの理解度
正直、どれくらい理解してくれていたのかはわかりません。監督・コーチ・トレーナーが全て、男性だったという時期もありましたが、やはり男性に理解してもらうのは難しいと思っていたので、男性に理解してもおうとすることに積極的ではありませんでした。生理痛がひどくなると、よくトレーナーに鎮痛剤をもらっていたので、きっと「あ〜生理痛があるんだね〜」くらいの感覚だったのかな、と。
男性選手と女性選手の違いは?
女性特有のホルモンの変化やPMSの悩み等は特に重要視されることはありませんでした。女性だからといって、特に練習のすすめかたなどに、男性選手との違いはありませんでした。血の量がいちばん多い2日目でも、普通に試合や練習には参加していましたし、むしろ『生理を言い訳にするな!』くらいの雰囲気があった気がします。あくまで私の感覚ですが・・・男性側だけでなく、私たち女性側も、生理痛などのPMSのことを特に取り上げることはないという感じでした。
これからの課題
あの頃は、女性ならこんな悩みは当たり前、こんなもんだと思っていましたが、もしもっと理解があれば、また違っていたのかなぁと思います。学校では保健の授業などで、こういったことは学びますが、スポーツに限らず各チームで定期的にこういうことを学ぶ機会があると、もっとパフォーマンスが上がるのではないかな、と今は思います。(時代が変わって、もしかしたら実際にはあるのかな?)生理痛があるのが当たり前ではないこと、ナプキンやタンポンの使い方、素材選びなどの知識もこれからは必要になってくると思います。特に激しい動きをするスポーツ選手や、長時間、席を離れられない環境のもとでお仕事をされる女性は、それに関わる男性にそういった知識を共有していただくと心強いのかな、と思います。